BL漫画感想ブログ

BL漫画ファンによる感想ブログです♡雑記含みます

金の絵筆に銀のパレット/ARUKU 先生

「美味しいものを食べたり緑の葉が綺麗だと思ったりするとき 亡くなった人たちのことを思う それを味わうことも見ることもできないのだと 謝りたくても謝ることもできなくて生きている ごめん」

 

戦後の話なのね。

桃里は結核で戦争に行かず終戦を迎える。美術学校の同級生は皆戦地で戦死した。叔母も空襲で亡くした。薬で結核は良くなるので退院、ただ身寄りも何もない。そこを「からすば」という人が世話をしてくれるとの申し出があり、その人の用意した家で生活を始める。

桃李は”みんな死んだのに自分はみんな殺したアメリカの薬で肺病を直してもらえて安穏と白飯くえてこんないいスケッチブックもらえて(烏羽さんがくれたの)生きてて申し訳ない”って烏羽さんに漏らすの、そしたら烏羽さんがね「描くんだよ」っていうの、その前後のセリフもホント素晴らしいの、1話読むだけでも価値があるよ🎨

 

胸に刺さるセリフやモノローグの嵐でね、BLではあるけど、”生と死が表裏一体で存在している”ことが理屈じゃなく感じる、それが瑞々しい色の中で描かれていて美しく悲しいというかな。

 

烏羽さんはとても男前の男性で、なぜか桃里の世話をしてくれて絵を書くように勧めてくれて、何が目的かわからないけど大切にしてくれる。この人の正体も最後明かされるんだけど、泣けるっていうと陳腐な言い方なんだけど、納得がいくというか、ああ、そうだったのか…ってなる。

 

ファンタジー要素も強くて昔の仲間や死んだおばさんと不思議な再会をするんだけど、桃里が生きていることの不思議さというか、彼は半分あちらの世界の中で生きている感がずっとするの。でも地に足をつけて踏ん張りながらも生きている。そのアンバランスさが季節のそれぞれの色とともにキラキラと描かれていて何を読んでいるのかわからなくなるんだけど、「生きてる」が強く強く刺さってくる感じ??え?どゆことか自分でもわからんけどそうなんよ🖌🎨

 

桃里は結核だったから誰かと触れ合ったりもちろん口づけしたりもしたことない、そんなこと望めない病気だったからね。で、映画館でキスシーンを見て、烏羽さんに(烏羽さんはビジネスマンなんだけど桃里をちょくちょく訪ねてくるのね)

「キ…キスしてみてもらえませんかね」って言うの。そこのやりとりとても素敵で、キスするかな、しないかな?っていう1ページが夢のように美しいの✨

「恋というのはどんなものです?」「…何故俺に訊く」ここのやりとりも素敵よ✨

桃里が咳コンコンの夜抱きしめて背中さすってくれたり二人は惹かれあって行くんだけど、ずっと最後の方までプラトニックなの。烏羽さんにとって桃里は神聖なものなのね。「白い梔子の花みたいだ」「俺なんかが触れたら真っ黒に汚してしまいそうで」なの。”女の人にするようなことしたいの?”と尋ねる桃里に「したいさ すごく」なんだけど自分の中の魔物を殺してからじゃないと…ってなってる。

 

二人がゆっくりと愛を育むのが美して美しくて絵もセリフも美しい、やはりARUKU先生は妖精かなんかなのかもしれない。って思うよ🧚‍♂️

 

「恋がどんなもんか わかったら 教えると言ったよな 少なくとも 俺のは 桃色だ」

How romatic 桃里だからね🍑

 

戦争を通して受けた二人の傷と二人がキラキラと恋をする模様が見事に交互に溶け合って繰り出されるんだよな、これは計算では描けないんではないかって思う、いや実際はすごい緻密な計算をしているのかもしれないが。考えるんじゃない、理解するんじゃない、感じる作品って感じ。何も考えなくても読めば分かる。伝わってくる。そこには深い深いARUKU先生の世界があってね、読者の感受性によって感じるものが違うんだろうな、というか、なんかすげえんよ。ホントすごい作家さんだと思う。編集の担当さんがついていけているんだろうか。。いや編集もすごい人おるんやろな。

 

烏羽凌駕さんはめっちゃかっこよくてARUKU先生の攻めさんとしては安心して読める溺愛攻めさん🦅🖤

桃里虹尋くんはセリフだけ眺めるとかなりの「あざとさ」があるようで全くあざとさを感じないのね。人間をだいぶ逸脱した人。そしてセッセの時笑うのよ。これがね、すごく好きだった。

 

「愛されてる感じがして嬉しいから泣かないよう 笑っちゃうんだよ」激きゅん(あ、これは烏羽さんのモノローグよ)

 

「ふああ…」「きゅうん」これは桃里くんのセリフです。

 

とにかく読んでみて。びっくりするから(〆それかよ)