BL漫画感想ブログ

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こたえてマイ・ドリフター/大島かもめ 先生

Disclaimer 新刊のネタバレ含みます、全部は言わないが。

 

衝撃的に良かった。

どういう話か全然知らずに読んだ、そういう状態で読めて良かった。

「1929年ー享楽的な街・ニューヨークで、男たちは刹那の快楽に溺れる」

帯の文句と夢のような美しい書影にいい意味で大いに騙された、素晴らしかった。

素晴らしくてものが言えない、ショック状態。

こういう作品を読めるからBL漫画はやめられない。

 

2人は子供時代に夢を分かち合った初恋同士、大人になって過去を明かさずに再会、ただ、その2人の過去は甘い思い出とはかけ離れていて…特にロバート(リンチェ)の生い立ちは目を覆いたくなる凄惨なもので。見た目の華やかさとは裏腹に暗い過去に飲み込まれるような人生を歩んでいる、父親を刺し、少年院に入り、その後男娼をして今はマフィアと組んで禁酒法時代にお酒を売り捌いている。

 

ロバートはマフィアに追われることになるんだが、手負いのロバートは巻き込んではいけないと思いながらもエリオットに助けを求める、2人はお互いが幼い日の初恋の相手だと明かして追われながらも2人で夢のような日々を過ごす。エリオットは幼い日に父親を刺してまで自分を守ろうとしたロバート(リンチェ)のことを今度は自分がマフィアや当局から守ろうと、仕事も辞めて株で生計を立てるのね。でも世界恐慌で全てを失い、2人でどうしたらいい?となったところにマフィアの追っ手が。2人はまた離れ離れに。

 

冷静に考えても2人には救いがない。

リンチェは生まれた時から救いがない、その中でエリオットとの思い出だけを頼りに生きている。

エリオットはアッパーミドル出身のいいところに勤める裕福なサラリーマンだったのにリンチェのために全てを捨てる。普通なら、なんでそこまでする?ラブに生きすぎやろ?って思いそうなんだけどエリオットは幼い頃ガチでリンチェに命を助けられているので(大人になってそれを聞くんだが、本当に目を覆いたくなるようなことがあってね)自分の全てを賭して彼を守るのが納得がいくのよ。

2人のラブストーリーは危うい、一寸先は闇で、ご都合主義なところがない。救いがない。次々と現実的な問題が彼らを襲うし、これからもそうなのさ。ただ、完璧なラブストーリーだった。ここまで暗い話なのに美しいラブストーリーだった。

 

高級ホテルのパーティーでタキシード姿で出会って高級ホテルで逢瀬を重ねる2人の美しさ、全てを失ってボロボロの状態で再会して愛を確かめある2人の美しさ。素晴らしかった。

 

リンチェは最後片目が潰れて足も引きずって(マフィアにボコボコにされてその後服役するのね)刑務所から出てくるんだけど、その姿がとても美しく感じた。彼の美しさ、何も持たずにただエリオットと過ごす時間が彼の全てだった幼少時代をもう一度見ているようだった。そしてエリオットはその後も転落(転落の性質がああ、、なんだよな)し続けているんだけどリンチェと生きると覚悟した彼の表情の美しさよ。

 

…あの手紙 俺にはこう読めたよ 「愛している」「ずっと一緒にいたい」って

 

涙なしには読めん。

 

 

 

大島かもめ先生の作品の中でも最高傑作だろうし、私の中でも最高傑作の一つです。