BL漫画感想ブログ

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チキンハートセレナーデ/大島かもめ先生

大島かもめ先生の虜です…はい、虜です

BLにそんなリアルは求めていないんだが、大島かもめ先生の作品にはBLを超えた大人の孤独と救済がミニマムな表現で見事に描かれていて刺さる…私のために描いてくれたの?って思う作品ばかり!まじかよ…って言葉を失ったことありすぎる…

 

チキンハートセレナーデ…嗚呼、まずこの書影のオシャなこと山の如し、美しいこと風の如し…とにかく風林火山、花鳥風月。

 

あらすじてきな🌙

話としてよくある話なのかもしれない。

ゲイバーで出会った二人が本物の恋に落ちる。

攻め央倫(ヒロミチ)は家族にゲイバレした時大変なことになり(いいとこの坊ちゃんなの)“ゲイは治します“という状態で将来は女性と結婚することに決めている、決めさせられている人。

受けの駿斗(ハヤト)も家族にはゲイであることを隠している(呉服屋の次男で他店で修行中)親に愛されずお兄さんの愛情を受けて育った子。ただお兄さんには新しい家族ができて子供ももうすぐという状態。

二人最初はセフレだったんだけど、だんだん仲良くなって家でも会うような関係に…でも央倫はお見合いを進めていてもうその人と結婚することになるんだろう…このまま続けることはできないって一度けじめをつけることになる…(その別れも表面上は大人であっさり。分別ついた大人の大人の別れだった。)でもね、央倫は結婚話蹴って駿斗の元に戻るの。

 

こう書いたら、へえ〜よくあるBL話じゃん?ってなるんだけど全然違うんだよな、素晴らしいって百回叫びたいよ🌋

駿斗に関しては唯一愛してくれた兄貴を心の拠り所にしているんだけど…

「佑兄が結婚するって聞いた時はまだ大丈夫だったんだ でも子供が出来たって知らされた時 叱驚するくらいショックで 祐兄は自分自身の家庭を作るんだって思い知らされた そこに俺はいない」

そこに俺はいない

このセリフに撃ち抜かれた…ゲイで自分の家庭は望めないって側面もあるかもしれないけど大人になって周りは変わっていく中で取り残される自分みたいのがなんか簡潔に表現されている感じがして…刺さった。すごい刺さった。孤独って嫌味なく描くのすごい難しいと思うんだが大島かもめ先生はこれが天才的に上手い。

これを聞いた央倫と駿斗のやりとり

「なんて言って欲しいんだ」

「…何か優しい事言ってよ」

ここの下りが見事すぎてね…胸を撃ち抜かれました。

二人のやりとりは始終そっけないんだけど時々感情が漏れて爆発するシーンがあってね、その破壊力ときたら…なんか固まるよ。

 

“愛されたい 誰かに愛されたい だから誰かを本気で愛したい“こんなこと大人は口には出さないけどみんなこういう気持ちを抱えながら生きてんじゃねえかな?って思うのだよな。

二人で暮らすようになっても駿人はいつかまた一人になるんじゃないかって怯えているんだが、この怖さもなんかわかる気がするんだよね。

「…俺は今の自分が今までのどの自分より一番信じられる 信じろ」これを言われてからもどこか信じられなかった駿人が「愛してる」をいう下りはご自分で読んでみて。こんなミニマムなセリフなのに全てが伝わる。すごすぎる、、ってなります。

 

で、この作品に関しては番外編がものをいう。私は本編が命、番外編とかは別に読まなくてもいいってスタンスなんだけど、この作品に関しては番外編まで読んで一つの物語だと思ったなあ。

駿斗と一夜を共にした帰りにこのまま関係を進めて恋人になるって未来もあるかもしれないが俺はそれができないって一人物思いに耽りながら喫煙所でタバコを吸っている央倫が

“俺はこの手で男を抱いた 男を抱けたんだ”って思いながら涙を流すシーンをみて、びっくりというか…固まった。(あれが男性と関係を持った初めての夜だったんだよね、その前無理やり女性と関係を持ったこともあったんだって)

自分の欲しいものは絶対手に入らないように人生できている、それを諦観しているような央倫の人生にとって奇跡というか、予想よりも素晴らしい人生のおける手応えみたいなものだったんだろうなというか…共感できるわけがないんだが、この表現の素晴らしさに彼の気持ちが傾れ込んでくるようでした。

 

他にも全てのシーンが静かでね、ちゃんとユーモアもあって読みやすいんだけど胸を撃ち抜かれる場面の連続です。大袈裟な表現がないの、ここまで静かなおさえたトーンなんだが、時々二人の感情が瓦解する時の破壊力の美しさよ…その表現の巧みさよ。

虜です。貴女の虜です。大島かもめ先生…ラブ…

説明がいらない 読めば全てがなだれ込んでくる